アンテルナシオナル・シチュアシオニスト第4号(1960年 6月)

『黄色地帯の描写』 訳者改題

ここで描写されている「黄色地帯」は、コンスタントが1956年からSI脱退(60年)後の1972年まで16年間にわたって探求し続けた新しい都市「ニュー・バビロン」の構想の1部である。この構想の基本理念は、『アンテルナシオナル・シチュアシオニ…

『独自性と偉大性(イズーの体系(システム)について)』 訳者改題

ここでヨルンが批判しているレトリスムの創始者イジドール・イズー*1とその「体系」について簡単に説明しておく。 ルーマニアの裕福なユダヤ人家庭に生まれたイジドール・イズーは戦前、膨大な量のフランス語やラテン語の読書のなかから、1942年、17歳…

黄色地帯の描写

訳者改題 都市の周縁部分に位置するこのブロックが黄色地帯と名付けられるのは、その地面の大部分、とくに東部の3階の床の色のためである。もともとこのブロックには、遊戯地帯として利用するのに相応しいやや陽気な雰囲気があるが、この色の特徴がさらにそ…

独自性と偉大性(イズーの体系(システム)について)

訳者改題 イジドール・イズーは、『ポエジー・ヌーヴェル』誌*1の第10号(1960年冬季号)で、彼の近年の友人の1人――イズーは、この人物のことを過分に宣伝せぬために、Xという目立たぬ呼び方をしている――の著作に反駁し、次のように断を下している。…

『経済の終焉と芸術の実現』 訳者改題

アスガー・ヨルンのこの論文は、後の覚書にもあるように、マルクスの「経済学批判Critique de l'économie politique」のタイトルを転倒した「経済的政治批判 Critique de politique économique」というタイトルを持つ文書の抜粋である。正確には、この文書の…

『契機の理論と状況の構築』 訳者改題

ここでSIの考察の対象となっているルフェーブルの「契機の理論」について説明しておこう。 ルフェーブルは1959年、58歳のときに発表した哲学的自伝『総和と余剰』(邦訳、森本和夫・白井健三郎訳『哲学の危機 総和と余剰』現代思潮社、1970年)…

『パリ陥落』 訳者改題

戦後のパリの文化的地位の低下は、たとえば第二次大戦後、現代美術のヘゲモニーがパリからニューヨークへと移ったことをもって言われることが多い。ナチスが政権をとり、ヨーロッパの他の国々を侵略し始めると、バウハウスのメンバーやシュルレアリストらが…

『迷宮としての世界(ディー・ヴェルト・アルス・ラビリント)』 訳者解題

60年代のシチュアシオニストのもう1つのキー・タームは「迷宮」である。1957年にドイツで出版されたグスタフ・ルネ・ホッケの書物と同じタイトルを持つこの論説記事のなかでは、60年4月に実際に計画され、結局は実現しなかったアムステルダム――そ…

『自由時間の使い方について』 訳者解題

1960年代の冒頭を飾るこの「論説」は、高度資本主義社会が生み出した「余暇」の増大と「消費」の拡大をめぐり、〈アルギュマン〉派の「左翼社会学者の天上世界」と、〈社会主義か野蛮か〉グループの新しいマルクス主義の「神話学的作業」をともに批判す…

イスラエルにおいて文化革命を開始するための指示

構築された状況の概念そのものは、つねに、人間存在を癒しがたい凡庸という病態(パトス)に陥れる日常化した精神の病によって歪められている、自分たちの、動きを欠いた饒舌の中に留まることに満足している受動的な人々や、自称進歩主義者たちの凡庸さに対…

いくつかの解釈の間違いについて

ロベール・エスティヴァル*1が、自らシチュアシオニストの体系と呼ぶものに関して行っている研究(『グラム』誌第4号)について、正確な情報を求めようとするその真面目な態度は認めねばならない。だが、ことSIに関する限り、この態度は極めて稀である。…

ギャングランドと哲学

『ペイピン−バオ』は世界最古の日刊紙である。15世紀も前から発行されており、最初の号は4世紀にペイピン、今日の北京で出た。この新聞の書き手たちは、国家と宗教の不謬性を攻撃したため、しばしば中国の主権者の不興を買った。それでも新聞は毎日発行さ…

マニフェスト

技術の不可逆的な発展によって、また、意味を奪われたわれわれの社会的生にその技術を満足に使用することが不可能であることによって、人間的な新しい力が日増しに強まりつつある。既存の枠組みはこの力を抑えることはできまい。 社会の中の疎外と抑圧は、そ…

 経済の終焉と芸術の実現

訳者改題 時間とは、人間にとって、空間を観察するある1点から見た一連の現象のことにほかならないし、また空間とは、時間、あるいは、プロセスの中での諸現象の共存の秩序のことである。 時間、それは空間の中で進行する変化という形式を通してのみ知覚し…

綱領の粗描

「ツァラトゥストゥラは諸身分の間の闘争が終わったことに満足している。個人のあいだの階級秩序の時代がやってきたことに。平準化という民主主義的体制に対する彼の憎しみは、前景におかれているに過ぎない。事実、彼は現状がそうなっていることを喜ばしく思…

契機の理論と状況の構築

訳者改題 「日常生活レヴェルでは、この介入は自らの要素と瞬間を『契機』のなかに最良の仕方で配分し、日常性の生命の産出を強め、そのコミュニケーションとインフォメーションの能力を、またとりわけ自然的・社会的生の快楽の能力を強化することによって表…

迷宮としての世界(ディー・ヴェルト・アルス・ラビリント)

訳者改題 1959年、シチュアシオニストはアムステルダム市立美術館*1(ステデリーク・ミュージアム)とのあいだで、この美術館の場所に依拠すると同時にその枠を大きく超えた大々的な示威行動を組織することに合意した。それは、アムステルダム市街地の中…

 自由時間の使い方について

訳者改題 ここ数年来、左翼社会学者たちのあいだで最も月並みな認識となっていることに、余暇の役割を高度資本主義社会においてすでに支配的なファクターとして強調することがある。それこそは、生活水準を改良主義的に高めることが重要だという考えに賛成か…

シチュアシオニスト情報

シチュアシオニストインターナショナルの第4回大会は1960年の9月末に、ロンドンで開催される。* イタリアのSIの実験的活動についてのロレンツォ・グアスコ*1の研究が、1960年1月にトリノで刊行されたが、それは愚昧の堆積といった代物である。…

パリ陥落

訳者改題 パリは、支配的文化が崩壊する時期に、さまざまな探求の主要中心地であり、あらゆる近代的な国々──そこではどこも同じグローバルな文化の問題が繰り広げられていた──に生まれた経験と個人が集中される地点であった。この役割は、パリが第二次世界大…