解説

祝祭、スペクタクル、日常文化の政治学 吉見俊哉

「祝祭」について語ること 「祝祭」について語りたい。1968年前後の知と政治をめぐる動揺のなかで、70年代にはあれほど華やかに、また熱烈に語られた祝祭についてである。あの時代、祝祭はさまざまな演劇集団や芸術家、批評家、記号学者、そして歴史家や人類…

ポストフォーディズムのもとで革命に忠実であるために──非生産的労働をめぐる覚え書き 田崎英明

ポストフォーディズムにおいて、労働は一種のパフォーマンスとなる。フレキシブルな生産体制において重要なのは、偶然性が支配する(社会学でいうダブル・コンティンジェンシー)環境の中で、コミュニケーションしつづけること、コミュニケーションの回路か…

あとがき

本書はシチュアシオニスト・インターナショナル(SI)・フランス・セクションの機関誌『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』誌 第12号(1969年9月)の全訳である。SIの機関誌は、第1号から第11号まで、全セクションの編集によってフランスで…

〈ここ〉と〈よそ〉──シチュアシオニストと第三世界の革命 鵜飼 哲

現場で闘うこと、それはがつても今も、社会変革をこころざす人々にとって決定的な要請である。このことを否定する者はどんな変革とも無縁だろう。そもそも現場で闘うという表現自体が重複語なのである。現場以外のいったいどこで闘うことができるというのだ…

同時的体験の時代──堀田善衛の想い出に── 栗原幸夫

”現代”の時代的徴表として「世界的同時性」をあげるのはいわば常識に属する。そして日本においてそのような意味での”現代”が、だいたい関東大震災前後に始まったと見るのも、大方の同意するところのようだ。しかしもう少し厳密に検討してみると、このとき成…

男の「遊び」と女の労働  ──フェミニズムから見たシチュアシオニスト 伊田久美子

実を言えば、「アンテルナシオナル・シチュアシオニスト」の解説を書くことは、私にはかなり困難な仕事であるように思われた。主体的に参加した女がほとんどいないのである。50-60年代という時代状況を考えれば、これはしかたのないことなのかもしれない…

シチュアシオニストを斜めから見ること (『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第4巻解説 by 上野俊哉 )

シチュアシオニストの運動に関心をもったきっかけは、パンクとのつながりであった。知られるように、セックス・ピストルズの仕掛け人でありマネージャーであったマルコム・マクラレンはロンドンにおけるシチュアシオニストのシンパだった。この事実をふくめて…

空間の政治学に向けて ──シチュアシオニスト、アウトノミアからレオンカヴァッロヘ by伊藤公雄

はじめに シチュアシオニストの問題提起には、つねに空問の要素が伴ってきたことは誰でもすぐに気が付くことだ。1950年代にドゥボールは、すでに『都市地理学批判序説』を発表しているし、シチュアシオニストによる「統一的都市計画」や「心理地理学」と…

都市計画の幻想 by布野修司 『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第3巻解説 

1950年代末から1960年代にかけて、建築あるいは都市計画の分野ではひとつのパラダイム・シフトが起こりつつあった。 CIAM(国際近代建築家会議)が崩壊した1956年以降、機能主義の乗り越えが様々に摸索され始める。「機能」に変わる「構造」…

西ドイツのシチュアシオニストたち  by池田浩士 (『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第3巻解説)

1961年10月30日という日がどんな日だったか、いまでは、憶えているものは世界中でもそう何人もいないだろう。 この日、停止していた核実験を9月1日から再開したソ連は、50メガトンの超大型水爆の爆発実験に「成功」した、と発表した。 この日、…

ドゥボールの死について

本書の校正の最中に、ギー・ドゥボールの自殺を知らされた。12月2日、本書にも解説を書いていただいたパリのコリン・コバヤシ氏からのファックスで、フランスの新聞がドゥボールの自殺を報じているとの知らせを受けたのである。コリン氏からすぐにファッ…

破壊と実現 ───ギー・ドゥボールと平岡正明、そしてフランツ・ファノン  by 平井玄 (『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第2巻解説)

1、1969年のシュルレアリスム 「この手の文学主義者は何の役にも立たないな」───と、その連中を見ながら私は思った。彼らの黒いヘルメットには、”コントル・アタック”と赤ペンキで鮮やかにレタリングされていたからである。1970年の夏、場所は都内…

新たな状況を構築するアクティヴなアートは可能なのか by コリン・コバヤシ (『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第2巻解説)

何か底についてしまった、これ以上落ちようのない無限の固い底に辿りついてしまった、そんな感じがしているのは私だけだろうか。それは言うまでもなく、1989年以来のベルリンの壁、ソ連邦の崩壊を経て湾岸戦争を大きなターニング・ポイントとして旧ユー…

いま現在の運動へつらなるラディカリズム by 小倉利丸 (『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第1巻解説)

シチュアシオニストは様々に語られてきた。少なくとも、欧米諸国ではそういえる。欧米の思想や運動をいち早く紹介することに長けているこの国に於いて、シチュアシオニストへの注目の少なさは、特筆すべき興味深い問題である。*1戦前戦後を通じて、この国の…

サルトル、ガタリ、シチュアシオニスト…………状況の変奏 by 杉村昌昭 (『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』第1巻解説)

“シチュアシオン”(状況)とははなはだ便利なことばである。“状況”とつぶやくなり書き記すなりするだけで、なにごとかを語ったような錯覚におちいる。しかし、いうまでもなく、”状況”という記号のシニフィエ(意味内容)は各自の思想やイデオロギーに応じて…

「転用」としての闘争──シチュアシオニストと68年(by木下誠)

イマニュエル・ウォーラースティンは、1989年に刊行した『反システム運動』のなかで、世界各地で既存の社会総体への大規模な異議申し立ての運動が起きた1968年という年を、1848年に匹敵する「世界革命」の年としている。フランスの五月革命、ド…