ポトラッチ 18

レトリスト・インターナショナル・フランス・グループ情報誌────── 月刊

1955年3月23日

〔中略〕


●教育的価値(最終回)


声4─── われわれがこれまで検討してきた土地の起伏や気候や河川は、生物、すなわち植物や動物や人間たちが生きている環境を形づくっている。それぞれの種は自然条件に適応している。だが、しばしば、最も活動的で破壊的な存在である人間はこうした条件を変え、新しい風景を作り出したのである。
声1─── ホー・チーミン*1の星を型押しされた赤旗はいくつも長い間、町の上に翻っていた。新しい支配者たちはそれで大聖堂を飾ることを忘れなかった。
声4─── このようにして、文明と現代的な生活様式は、居住可能な地域の限界にまで浸透してゆく。
声3─── 南極の周囲には山地の多い大陸が広がっている。
声2(少女)─── たとえ、死の闇の谷を歩いているときも、悪いことを心配しないでしょう。なぜなら、あなたが一緒にいるから。
声1─── 探険家の敵は、寒さと風と暗闇と孤独である。こうした地域への出発は本当の冒険だった。無線と飛行機の助けがある今日でも、探検家は道に迷うことがあるが。
 彼らは、星座や波や風を頼りに進むことができる。彼らには、竹の棒でできた、島と海流を示しか海図があるのだ。
声2(少女)─── あなたがまだ若い頃、わたしに抱いていた愛情を覚えています。あなたが婚約した時に、わかしに抱いていた愛情も覚えています。あなたがわたしの後について砂漠や、未開の土地に来たときの愛情も……。そして、わたしは果樹園によく似た国にあなたを入らせ、その果物を食べ、良いものを味わわせました。
声1─── この世に革命を起こす者は、良いことをしたいと思っている者は、墓の中でしか眠ってはならない。
声3─── 人間は、自分の使いたい用途のために家を建てる。同じ家が、あらゆる用途やあらゆる生活様式に適するわけではないのだ。
 革新の時代には、新しくないものは有害である。
声1─── 思想の歴史は、精神的生産が物質的生産とともに変化するということ以外の何を証明しているだろうか。
 ある時代の支配的思想とは、支配階級の思想以外のなにものでもなかった。社会全体を変革する思想というものがあるという。このことは実は、1つの事実、すなわち、新しい社会の諸要素は古い社会のなかで形成されたものだという事実、古い思想の解体は古い生存条件の解体とあい伴うものだという事実を言い表わしているにすぎない。
声2(少女)─── 今日、人々はとりわけ、機械が無数の物体を生産することのできる大きな工場で働いています。工員は機械を監視し、調整します。工員は、単調で厳密に定められた仕事しかしません。このような工場の運営には、巨大な資本と動力と豊かな労働力が必要で、便利のよい交通路に近接していなければなりません。

ギー=エルネスト・ドゥボール

このラジオ番組のすべての文章は、以下に挙げる書物から転用されたものである。
  ボシュエ著『ベルナールート・クレルヴォー頌徳の説教(パネジリック)』。
  ドゥマンジョン*2、メニエ著『世界地理、第6学年』。
  1945年11月5日『フランス・ソワール』紙。
  『エレミア書』、『詩編』、『サムエル書』。
  マルクス、エングルス著『共産主義者宣言』。
  サン=ジュスト、『国民公会での報告と演説』。


『ポトラッチ』編集長 M・ダフ

パリ5区、モンターニュ=ジュヌヴィエーヴ街32番地

*1:ホー・チ・ミン(1890-1969年) ヴェトナムの革命家。1941年にヴェトミン党を創立して、日本軍とフランス軍を敵に回して独立のために戦い、第二次大戦後はヴェトナム人民共和国の大統領として、フランスを相手に戦った。1954年、ディエン・ビエン・フーの陥落の後、マンデス==フランスを首相とするフランス政府はインドシナからの撤退を決意、ジュネーヴで停戦協定に調印した。その後も、アメリカに支援された、南ヴェトナムの解放と祖国の統一のために戦った。

*2:アルベール・ドゥマンジョン(1872ー1940年) フランスの地理学者。地域研究、人文地理学の分野を発展させた。リセの教師をしつつ書いたピカルディー地方の歴史的地域研究『ピカルディー』(1905年)で学位を得て、その後、リール大学、パリ大学などで教鞭をとった。