落書(エクリチュール)の役割について (ポトラッチ 第23号)

訳者改題

 レトリストは、所定の街路にチョークか何かの手段で書き込んで、これらの街路の本質的な意味──それがある場合には──を強調する文章を決定するための第1回調査会を開いた。
 これらの書き込みの効果は、心理地理学的なのめかしから最も単純な転覆にまで及ぶだろう。以下に挙げる例がまず選ばれた。
 ソヴァージュ通り*1(13区)には「ここで死ななければ、もっと遠くまで行けるだろうか」──オーベルヴィリエ通り*2(18区−19区)には「革命・夜」──ブノワ通り*3(6区)には「すばらしいと人の言う、物売りトラックはここまで来ない」──ロモン通り*4(5区)には「懐疑を利用せよ」──セヴラン通り*5(5区)には「カビール*6に女を与えよ」。
 それから、郊外のルノーの工場の近くと、19区と20区のいくつかの地点に、「きみたちはパトロンのために眠る」というL・スキュトゥネール*7の言葉を書き込むことが時宜を得ているということで意見が一致した。

*1:ソヴァージュ通り パリ13区、オーステルリッツ駅の南のセーヌ川近くにある通り、ソヴァージュ( sauvage )は、フランス語で「野生の」という意味の形容詞。レトリスト・インターナショナル(LI)にとってこの通りは.「パリで最も美しい風景の1つ」だが、その通りの破壊に対して『ポトラッチ』第7号で非難の文章を発表している。

*2:オ―ベルヴィリエ通り パリ18区と19区の境界をなす南北の通り、東駅(ガール・デスト)に通じる線路に沿った通りで、貨物基地がある。LIにとっては、この通りは、[反逆者たちの食堂」と呼ばれるスペイン人労働者のバーのある通りとして親しまれた。

*3:ブノワ通り バリ6区、カフエ・ドゥー・マゴの脇を南北に走る狭い街路。サン・ブノワ通りのこと。

*4:ロモン通り パリ5区、フォセ・サン=ジャック通りとアルバレート通りを結ぶ通り。1867年以降、文法家で聖職者のシャルル・フランソワ・ロモンにちなんでこの名になった。かつて修道院や神学校が多くあった。女子感化院もある。

*5:セヴラン通り パリ5区、サン・セヴラン教会の脇を東西に走る狭い街路。サン・セヴラン通りのこと さまざまな国のレストランのある歓楽街。

*6:カビール アルジェリアの山岳地帯に住む、ベルベル人を起源に持つ民族。イスラム教徒が多い。

*7:ルイ・スキュトゥネール(1905−87年) ベルギーのシュルレアリスト詩人・作家。自動書記やアフォリスム的な作品で知られる。作品にアフォリスムや「形而上学的」ギャグなどでできた『私の落書』(45年)、小説『ある子供のヴァカンス』(47年)など。